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アレス動物医療センター

動物看護師って大変!

2023/2/2

 今月2月19日は日本全国ほとんどの動物病院が休診日になるのではないでしょうか。
 なぜなら第一回動物看護師国家試験があるからです。

 皆さんご存じでしょうか?
 獣医師も人間のお医者さんも、人間の看護師さんもみな国家試験をクリアした、国家資格保持者です。
 ですが実は動物看護師は今まで国家資格ではなかったのです。
 動物看護学校を卒業した動物病院で獣医師の補佐を行っている人(あるいは動物看護学校を卒業していない人もいます)であり、実はこの資格がないと動物病院で働けない、という資格はなかったのです。

 それが今年から国家試験を受験し、合格しないと動物看護師とは名乗れなくなります。
 その運命の試験が2月19日にあり、おそらくほとんどの動物病院で働いている(現時点で国家資格を持っていない)動物看護師が全国の試験会場に赴き、運命の試験を受けるのです。
 
 ですから、全国の動物病院から看護師さんが丸一日いなくなります。
 神無月に八百万の神様が出雲大社に集まるような感じです(分かりにくい)。

 動物看護士さんがそばにいない獣医師なんて、ピ〇チュウのいないさ〇し君です。
 ドラ〇もんのいない〇び太君です。
 コ〇助がいないキテレ〇君…はさほど困りませんが、世の獣医師のほとんどが役立たずになります。

 うちの病院の看護師さんはみな東京の試験会場なので、前日18日は午前診療のみとなり、みな前日入りして19日の試験に備えます。
 みんな田舎者なので、無事試験会場にたどり着けるか心配しています(とても失礼)。
 
 そもそもあれだけ大変な仕事なんだから、今まで国家試験でなかったのが不思議なくらいです。
 とにかく動物看護師という仕事は大変です。
 バリバリの5Kです。

 1.きつい
 2.汚い
 3.危険
 4.給料安い(ごめんなさい)
 5.休暇が取れない(本当にごめんなさい)
 
 を地でいく仕事です。
 しかも命にかかわる仕事ですから、責任も重いです。
 万一自分がミスをしたら、大切な命が失われるかもという恐怖と常に戦っています。
 あるいは一切動物看護師にミスがなくとも、命を失う現場に立ち会えば、信じられないくらい心を痛めます。
 大好きな動物の死はどれだけ経験しても慣れることはないのです。

 中には本気で攻撃してくる動物もいます。
 もちろん動物サイドは恐怖のあまりだったり、身を守るためだったりするでしょうが、それでも助けようとしている動物から攻撃を受け、一生残るような傷を負うこともざらです。
 攻撃してくるのがかわいい動物だけならまだしも、中にはさほどかわいくない飼い主が攻撃してくることもあります。

 動物看護師は命を守る大変な仕事であるうえに、サービス業でもあるわけです。

 にもかかわらず、給料も社会的地位もあまりに低すぎる(給料を出している立場でなんですが)。
 国家資格であってしかるべきだと思うのです。
 それだけの責任があり、それだけの知識と技術が要求される職業だと思います。

 国家資格になれば当然給料も増えるでしょう。
 うちの病院は現在看護師さんが10人いるので、もし全員合格してくれたら、ざっと見積もって年間300万程度のベースアップです。
 うわぉ!
 でもこれだけ大変な仕事なんですから、ちゃんとした給料をもらって、ちゃんと休めて、ちゃんとやりがいがなければ、動物看護師になりたいと思ってくれる人がどんどん減っていくでしょう。
 今後どんどん労働人口が減っていくことを考えると、「もっと割の良い仕事があるじゃん!」という話になってしまいます。
 【動物好き】という理由だけでは、戦い続けるのは難しいのです。
 やりがいだけではメシは食えないのです。
 そして世の中に動物看護師がいなくなってしまったら、動物病院に行ってもそこにいるのは一人ぼっちの〇び太君だけです。
 
 ですから、2月19日患者さんたちには多大なご迷惑をおかけすると思うのですが、ご了承いただきたいのです。
 そして願わくばそんな大変な思いをしながら働いている動物看護師さんたちに敬意をもって接してあげてほしいのです。

 ただ一つだけ懸念があって、それは熟練の動物看護師さんたちです。

 うちの病院だと一番長く働いている看護師さんでもう19年です。
 お子さんもいて、毎日家事と子育てをしつつ、病院でもガンガン働いています。
 ガンガン働いていますがなにぶんアラフォーです。
 記憶力は二十歳の子たちには遠く及びません。
 国家試験の勉強をする時間もありません。
 仕事は週休二日でも、家事育児は年中無休です(おうちにもよるでしょうが)。
 でもその技術は長い経験に裏打ちされた素晴らしいものです。

 うちの病院の看護師さんたちの半分は既婚者ですが、彼女たち主婦連が今毎日動物看護学校で勉強している二十歳くらいの子たちと同じ土俵で戦うって、ちょっとシビア過ぎないでしょうか?

 いや命に関わる仕事なんだから、主婦とか、育児とか関係ないだろ、と言われればそうなのかもしれません。
 人間の看護師さんだって通った道で、産みの苦しみがあるだろうと言われれば、それもそうかもしれません。
 そんなこと言っていたら、いつまでたっても国家資格にならないだろうと言われれば、それもそうでしょう。

 ただやっぱり、今まで20年近く病院を支えてきてくれた動物看護師さんたちがどうにか報われる結果であればと思うのです。
 国家資格を取れなくとも動物病院では今後も働けます。
 ただ国家資格を持った看護師とは当然できる業務に差が生まれます。
 差が生まれれば給料も差が出ます。
 
 そんな都合のいい結末にはならないのかもしれませんが、みんな揃って合格して
「来年から人件費えらいことになるよ〜!!」とうれしい悲鳴を上げられればこんな幸せなことはありません。


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