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アレス動物医療センター

電話相談

2022/8/11

 不安になったら、まず主治医の先生に相談する。
 ごくごく当たり前なことなのですが、意外とできない方が多いものです。

 富山県で開業したのがちょうど20年前。
 当時大阪の病院から富山に初めてやってきて、軽いカルチャーショックを受けたのを覚えています。
 富山の飼い主さんは「なんと礼儀正しく、遠慮がちな人たちなんだろう」と
 いや別に大阪の飼い主さんが礼儀知らずで、遠慮がないという意味ではなく
 ・・・ではなく

 基本的に敬語の方が多いですし、時間を守る方も多いですし、診療費を値切ってくる人もまずいません。
 いや別に大阪の飼い主さんが…

 まあ、とにかく控えめな方が多いなという印象でした。
 
 それはすごく県民性としては美徳であるとは思うのですが、遠慮がちすぎて質問や相談の電話を我慢される飼い主さんが多い気がします。

 ちょいちょいある電話で
「先日いただいた薬なんですが、すごく嫌がって飲ませると大暴れするんで、一昨日から飲ませるのやめてみてるんですが、やっぱり薬ってまだやめちゃダメですよね…」
みたいな、どういう返事を求めているのかよくわからない質問です。

 いろいろつっこみたくなるところですが、とりあえず
「いやもう止めてるやん!」
というつっこみが適切でしょうか。

「そちらのうさぎさんは膀胱結石の手術をしたばかりなので、今飲んでいる抗生剤はとても大事な薬なんです。
 お薬を飲ませるのが難しかったら、もう一度飲ませ方をお伝えするんで、一度連れてきてあげてください」
というようなお返事をするでしょうか。

「でも今度からは、事後承諾じゃなくて、まず薬をやめる前に相談してくださいね」とつけくわえます。

 そうすると「先生お忙しそうだから、質問だけの電話って、ご迷惑かと思って…」と言われるのですが、僕からすると相談もなく勝手に治療方針を変えて悪化されるほうがよほど迷惑ですし、こじれてからリカバリーするほうがよほど大変です。

 似たようなもので
「先日もらった医療食が嫌いみたいで、食べてくれないんで、前のフードに戻したんですが、よかったですかね…」とか
「エリザベスカラーすごく嫌がるんで、昨日から外してるんですけど、よかったですかね…」とかいう別バージョンもあります。

 多分「それならいいですよ」と言ってほしいのでしょうが、そんな電話こそ迷惑千万です。
「フード前のに戻しちゃだめですか?」とか「カラー外しちゃだめですか?」という電話を入れずに、家族会議で決定するなよ、と思っちゃうのです。

 動物病院によっては電話だけの相談お断りのところもあるでしょうし、北海道とか九州から電話がかかってきて「うちのうさぎが調子が悪くて」とか言われてもさすがに困るのですが、少なくともうちの動物病院は【来院できる距離間の方であれば】電話での質問は診療時間中なら全然問題ありません。
 その時診療が立て込んでいてお話しできないときは、あとから折り返して電話をします。

薬や治療方針に不安があったら主治医に相談する。
 牧草の食いつきが悪くなったら、「暑さのせいかな?」とか、「寒さのせいかな?」とか、「歳のせいかな?」と、勝手な診断名をつけずに電話で相談する。
 歩き方がおかしい、呼吸がおかしい、便がおかしいというときに「でも元気だから」とか思わずに電話で相談する。

 病院に連れていければ治りそうですが、そこまでの問題なのかわからないときに、「ちょっと様子を見よう」ではなく電話で相談する。

 電話だけなんて失礼かしら?申し訳ないわ
 とか思わずに。
 それはもしかしたら我慢強いうさぎ(あるいは動物)が指し示してくれたわずかなヒントなのかもしれません。
 大切な命がかかったお話です。
 変な遠慮は無用です。

 その代わり電話の指示にはちゃんと従ってほしいです。
「それでしたら、こうこうこうして、ちょっと様子を見てみましょう」というシチュエーションももちろんありますが、
「それはすぐ治療したほうが良いですから、連れてきてあげてください」というアドバイスにはやはり応えてほしいです。
 そこで「でも…」とか言われると、さすがにつらいです。
 その地味なダメージは獣医師の心を意外なほど蝕んでいくのです。


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