前回に引き続き輸血犬ハニワさん(ラブラドールレトリバー)の最期に関するひとりごとです。
けして楽しい話ではないので、見るのがつらいという方はここで読むのをやめてください。
ご飯は食べるが日に日に力が失われていくハニワさん。
きちんと食べるべき量を食べているのに貧血はさほど改善せず。
低蛋白は多少改善してきているが、それでも腹水がたまってきているようで、それを考えると良性の可能性は限りなく低い。
触診でわかるくらいゴツゴツとした小腸が触れるようになり、やはり小腸の癌の可能性が高い。
輸血をしたとしても手術に耐える可能性は20%もなさそうな状態。
悪性の場合は転移の可能性が非常に高く、手術での延命は場合によっては2〜3カ月。
もうすぐ12歳なので転移してなければあと1〜2年はいけるかも…。
20%の可能性に賭けて開腹手術をすべきかどうか…
妻に僕が想定する手術のリスクや、術後得られるかもしれないメリットを説明し、手術をどうするか相談しました。
妻は「泣きながら決められない」とつぶやきました。
それもそうだ。僕だって決めきれない。30年近くも獣医師をしていて、何が正解かもわからない。
手術を選択して2カ月経たずに死んでしまったら、手術を選択した自分を生涯攻めてしまいそう。
手術を選択せずにこのまま弱って死んでいくのを見ていたら、なぜ手術をしなかったのだろうと障害後悔しそう。
「僕が決めて良いか」と妻に聞きました。
妻は泣きながらうなづきました。
「僕は手術をしないで行こうと思う」と伝えました。
泣きながらうなづく妻に「もう栄養チューブも抜こう。この後もしご飯を食べなくなった時は、強制的に栄養を取らせるのはやめよう」とも伝えました。
妻はそれにもうなづいて答えてくれました。
妻はペットルームにマットを引いて、夜もつきっきりになりました。
僕は重度のアレルギー体質なので長時間ペットルームにいられません。ペットルーム横の廊下に布団を敷いて寝るようになりました。
こんな時にでも一緒に添い寝してあげることすらできない体に腹が立ちます。
4/15突然ドッグフードを食べなくなりました。前日までバリバリ食べていたのが急にです。むしろ血の3/4も失って3週間もご飯を食べていたのが不思議なくらいです。
もしかしたら僕らの心の整理ができるまで頑張ってくれたのかもと、勝手にメルヘンなことを考えます。
初めてチュールを買ってきました。人生初チュールです。
5本だけ食べてくれました。計算すると1日60本食べないと意味がありません。
それでもうれしかったですが、これも多分飼い主のエゴです。
この日からあからさまに呼吸が苦しそうになってきました。
4時間ごとに痛み止めの注射を打ちます。
痛みは治まる代わりにほぼ寝ているだけになりました。
意識もあるかどうかわかりません。ただ妻と体をなでながら話しかけるだけの日が一日二日と続きました。
そして日に日に不安が募っていきます。
「このまま苦しんでいる状態を続けさせて良いのか」と
意識もない、苦しんでいる、大型犬なのでもしかしたら1週間ほど頑張ってくれるかもしれない。
苦しんでいる状態を1週間も長引かせて良いのか。
安楽死すべきか。
ただ立場上安楽死をする場合は最後の注射は僕自身が打つことになる。誰かに頼むわけにはいかない。耐えられない。単純に耐えられない。
ではこのまま何日間も苦しみ続けていたら…耐えられない。それを選択した自分が許せない気がする。
「もしこの状態があと3日続いたら、安楽死を選ぶかもしれない。」妻にそう伝えました。
口に出してしまわないと、永遠に選択できないまま時が流れてしまいそうで。
ご飯を食べなくなって3日経ち、4/18とうとうその日が訪れました。
昼の休憩時間に病院を抜け出し、痛み止めの注射を打ちに自宅へ戻ります。
いつものように妻とハニワを撫でながら、とりとめのない会話をしていました。
そしていつ息が止まったのかわからないくらい静かにハニワは息を引き取りました。
本当に良い子でした。
生涯怒った顔を一度も見せることなく、たくさんのワンちゃんをその血で助け、僕に安楽死を選択させずに、僕と妻に撫でながら静かに逝きました。
妻とただただ泣き続けました。
今までありがとう。大好きだよ。さみしいよ。ありがとう。と
今日で四十九日です。
いまだにペットルームの余白に慣れそうもありません。
けして賢い子ではなかったけれど、あれほど良い子はそうそういないのではないかと、思います。
ただの親バカなんですけどね。
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