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アレス動物医療センター

支えられて

2022/6/9

 当たり前のことなのかもしれませんが、ずいぶん人に恵まれて、たくさんの人に支えられて今の僕だったり、今の動物病院があるのだなと実感します。
 
 以前のひとりごとでも書いたのですが、2008年に当院を退職した獣医師3号が、3年前に病院に戻ってきてくれました。
 福岡県出身の獣医師3号は、何の因果か大学卒業後富山県のうちの病院に来てくれて、ずいぶん頑張って働いてくれました。
 4年も働いてくれているうちに、立派な獣医さんに育ち、卒業後はご実家の福岡県に戻りました。
 その後いろいろあって東京に住んだり、千葉に住んだりといつの間にか10年もの月日が流れ、旦那さんが仕事の都合で富山県に移り住むことになったのを機会に、当院に戻ってきてくれました。
 10年ぶりにあった獣医師3号は3人ものお子さんを育てる立派なお母さんになっており、午前診療と手術のみの参加でしたが、家事をしつつ、3人のお子さんの世話もしつつ、旦那さんの愚痴も聞きつつ(あるか知らないですが)、さぞかし仕事との両立は大変だったろうと思います。
 何しろコロナ真っただ中、その間3人の小さいお子さんの世話というと、仕事抜きでもどう考えても大変です。

 それでも獣医師3号は愚痴一つこぼさず、頑張ってくれました。
 当時病院はコロナによる人手不足だったり、手術過剰の毎日だったりと目が回るほど忙しく、大げさでなく獣医師3号が来てくれていなかったら、どうにもならなくなっていたのではないかと思います。

 僕の師匠が以前言っていた
「師匠が弟子を育てるのは、親が子供を育てることと一緒。
 そこにメリットだったり、将来の利益だったりを考えるものではなく、当たり前の摂理
 沖田氏も開業して自分の病院を持ったら、損得抜きで自分の弟子を育てなさい」
という言葉を、自分の獣医師としての根幹としてずっと大事にしてきました。

 もちろん仕事ができるようになれば、とても助かるのは助かるのですが、それでも損得抜きで自分の病院に来てくれた獣医師は育てようと思ってきましたし、それはこれからも変わりません。

 でも、獣医師3号は返さなくても別に構わない恩を返しに戻ってきてくれました。
 
 この仕事をしていれば、たくさんの喜びややりがいは感じますが、10年ぶりに戻ってきてくれた時の嬉しさは何にも代えがたいものだったと思います。

 それから3年たち、ある日獣医師3号が神妙な面持ちでお話がありますと声をかけてきました。

 芯が強く、愚痴一つこぼしたことがない獣医師3号が今にも泣きそうな顔で
「実は主人の仕事の都合で東京に戻らなければいけなくなって…」と

「先生にはご迷惑ばっかりかけて…」と

「いや、全然迷惑なんて掛かってないよ。
 先生がいてくれなきゃ、この半年どうなってたかもわからない。
 大げさでなく先生のおかげで、この半年の苦境を乗り越えられたんだよ」
といくら言っても、まったく納得のいっていない顔で「こんな大変な時に、すみません、すみません」と

 もちろん東京に行ってしまうとまた何年も会えなくなってしまうのかもしれませんが、別に一生会えないわけではありません。
 おそらく旦那さんの仕事やお子さんの転校のことなどを考えると、本当はもっと早く引っ越さなければいけなかったのかもしれません。

 ただでさえ大変だったでしょうに、さぞかしつらい思いをさせてしまったのではないでしょうか。
 
 不義理でも何でもない。
 あなたのおかげで一番忙しい時期を乗り越えることができました。
 あなたのおかげで自分が行ってきた獣医師の育成が無意味ではなかった、少しは役に立てていたと実感できました。
 本当に助かりました。
 本当にありがとう。
 
 心からそう思うのです。

 ただまあ獣医師3号はあたりはソフトですが、心はべらぼうに強い頑固な女性なので、僕が何を言っても慰めとしかとらえないでしょう。

 しょうがないので、ひとりごとに書くことにしました。
 僕の書いたコラムなんか読むなといくら言っても、どうせ読んでいることでしょう。

 本当に感謝しています。
 富山に戻ってきてくれてありがとう。
 一緒に働けたこの数年、本当にうれしかったです。
 どこに行っても応援しています。


アレス動物医療センター

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